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2008年9月14日 (日)

吾妻連峰遭難未遂記

諸事情により掲載をしていませんでしたが、掲載を再開します。 

はじめに

  この記事は、吾妻連峰にて私が実際に遭難しかけた時の記録です。

 遭難しかけたことを自慢するわけでも、笑い話にするための記事ではありません。まだ遭難したことの無い人、計画や準備を万端にすれば遭難しないと思っている人、心理状態に興味がある人などの方々に参考になればと思い書きました。特に、私と同じ「登山初心者」の方には是非読んでいただきたいです。

 もちろん、すべて事実で、脚色は一切ありません。

○登山者(執筆者)情報

  年齢:30歳

  性別:男

  登山暦:4ヶ月

  元自衛隊で、山歩きやアウトドアには慣れていた。

  地図やコンパス、防水携帯、予備として1日分多めの食料、風邪・怪我・捻挫などに備え た医薬品もある。上級救急救命士の資格や自衛隊では予備衛生要員、元介護職でもあり、 応急手当の知識も技術もある程度ある。

 雨具も、上下セパレートタイプのミズノの雨具を準備。スパッツやザックカバーも、もちろん装備。

本文

吾妻連峰縦走目指して、一泊二日の山登りの予定だった。

 朝4時30分。小刻みに揺れる携帯電話で目が覚めた。

 ぐっすり眠れたとは言えないが、体が重いわけではなく、むしろ体調は良い。

 あたりを見回すと、自分以外はまだ眠っているようだ。山小屋で朝食をとるつもりだったが、起しては悪いと思い、登山の準備をして外に出た。

 軽い空腹を抱えつつ、東大嶺へ向かう。この頂上から絶景を眺めながら朝食をとろうと考えたのだ。

P9140095_1280 予想以上の絶景で、しばし我を忘れる。

ほぐれた絹糸が山々を舐めまわし、金糸で織られた生地が頭上に広がっていた。

しばし見とれたあと、朝食の準備を始めた。

赤飯のアルファ米とチキンラーメン、味噌鯖の缶詰、コーヒーがそのメニューである。

行動食としてカロリーメイト2箱、キャラメル2箱があり、さらに3食分の食料がザックにあるでの、食事の心配はなかった。

ちょっと水をいれすぎて、ふやけてしまった赤飯を味噌鯖で味をごまかしつつ、チキンラーメンを食べる。

絶景を見ながらのコーヒーは格別の味だった。

食後、10分ほど写真を撮り、登山を再開する。

谷地平と昭元山の分岐点につく。

当初の予定通り、谷地平コースへとる。山小屋で、谷地平は沢登りや泥濘がひどいときいていたので、雨具とザックカバーをかけて対策をとる。デジカメもビニール袋に入れた。

しばらくは木道を歩き、箱庭のような湿原に感動しつつ、順調に進む。

そして、運命の分かれ道が訪れた。最初の沢渡河である。

 あとでわかったことだが、ここにはちゃんと分かれ道を示す看板があった。しかし、その看板は笹の中に落ちてしまい、私は見落としてしまう。ちゃんと注意してみれば分かるのだが、そのときの私は、それを発見できなかった。

そして「谷地平は沢登り」という断片的な前情報により

「お、さっそく沢くだりが始まったな」

と思い、なんの迷いも無く沢へ向かってしまった。

 最初は、浅い水深で、岩も沢山あり、歩き易かった。それに、岩には白いペンキが●と書いてあるので、道に迷っているという感覚はなく「歩き憎い道だな」と思った程度。

「あそこの道は、登山道とは思えないよ」という前情報を誤って解釈していたことも原因であろう。

 しかも、この白いペンキの●だが、後に判明したことだが、ペンキではなく「鳥の糞」だった。べちゃっと岩に落ち、中央の黒いものが無くなれば、印に見えなくも無い?

 降りていくうちに、沢は歩き難くなってきた。1mちょいの段差を降りたり、膝まで水に漬かる場所がでてきたのだ。

「道を間違えた?標識見落としたかも?」

 沢に入って20分後。最初にそれを感じた。このときに戻れば、まだ間に合った。実際、少し戻ったが「でも、ペンキで印あるし、ここまで来て戻るのもなー」と思い、沢下りを再開してしまった。

 さらに進むと、2m近い落差の道があった。今考えれば、どう考えてみ道を間違えてると思うのだが、なぜか、そのときの私はそう思わなかった。なんと、その落差の下の岩には

「→」という印が見えたからだ。もちろん、これは私の見間違い。鳥の糞と岩のコケがおりなした矢印だった。この矢印には何度もだまされ続ける。

「あ、矢印あるな。じゃ、ここを降りるのか」

そう思い込んだ私は、なんとかこの落差を降りた。

そして、また1時間ほど歩く。その間、何度か地図を見るが、

「ま、この地図は当てにならないしな」

と今では信じられない思考で、地図を軽視してしまった。

だが、一向に見えてこない登山道に

「あれ?間違えた?」

とさすがに思い、戻ることを決意・・・だが、遅かった。

 冷たい沢水に思った以上に体力を奪われていた上に、登りである。何度も足を滑らせ、膝を打ち、頭を打ち、転んで深みに落ちたりと、散々だった。

 そして、戻れない決定的な場所にでた。先ほどの2mの落差が壁のように立ちふさがったのだ。回り道はないかと探したが無理だった。なんとか登ろうとしたがあきらめた。

「ダメだ。こうなったら、下のほうの分岐点に向かおう」

地図をみると、谷地平へ向かう分岐点が沢にあるようだった。

 この沢下りも散々だった。転ぶは足を軽く捻るわ、胸の辺りまで水に漬かりながら歩くわと、もうヘトヘトであり、徐々にだが、確実に体力は失われていった。

 いつだったか忘れたが、少しでも軽くしようと、カメラの三脚を捨てた。

 やばいかなーと徐々に思い始めたが、「なーに、食料もあるし、暖をとることもできる。沢水は飲めるし、雨具もあるし、薬もある。心配することなにもないじゃん!」と自分に言い聞かせた・・・が、不安は吹き飛ばなかった。でるのはため息だけだったことを覚えている。

「誰かいませんか~!」

「沢のほうです~!」

とがむしゃらに叫んだりもした。熊よけの笛を何度も吹いたことも覚えている。

 何度目かは覚えてないが、足を滑らせて水の中に落ちた。このとき「あーこのまま死んでもいいのかなー」とふと、頭を過ぎる。しかし、すぐ我にかえる。家に帰って、やりたいことが次々に頭に浮かんだのだ。「ギアスの続きがみたい」「ネギまの続きがみたい」「母親に自分の葬式をださせたくない」「3onでまだ布スキルを50にしていない」「まだまだまだやりたいことが沢山ある!」実にくだらないことから、親不孝をさせたくないという思いなど、本当にさまざまな欲望が浮かんできたのだ。

 そして、私は生きる決心をした。だが、このときの恐怖はまだ覚えている。交通事故の場合、死を感じるのは一瞬だが、この場合、じわじわとやってくるのだから、本当に怖かった。

 地図をみると、もし分岐点を発見できなくとも、国道にでる可能性があった。その前に、滝があるので、そこまでいったら、ちょっと戻れば分岐点の付近であるのを発見した。

 まもなく前進を再開した。ほとんどヤケクソだったが、いけるとこまで行こうという思い出で足を動かした。

 そしてしばらくして、大きな滝の上にでた。地図を見ると小滝というらしい(実際は、地図に載っていない滝)

 降りれる道を探すが無かった。ちょっと戻れば分岐点かーと思いながら地図を見ると、あることに気づいた。現在位置が分かったことにより、本来の登山道の場所が分かったのだ。

 東側に、沢に沿った登山道がある。

 このまま行くより、こちらのほうが確実だと決意し、その登山道を目指し、沢の横の崖を登った。

 力を振り絞りなんとか登りきった。コンパスをみて東を確認し笹薮を掻き分けて進むと・・・あった、登山道が目の前に現れたのだ。

「助かった・・・」

 ここまでで、約5時間が経過していた。5時間も沢を彷徨しており、登山道の土の感触が妙に安心感を与えてくれたことを覚えている。

 そして、身体に鞭を入れて登山道を登りはじめた。以前、登山好きの後輩から「迷ったら降りるより登ったほうがいい。頂上は一つですから、迷うことは無い」ときいていたからだ。

 約2時間後、谷地平と昭元山への分岐点に出た。

 「生きてる・・・」

本当にそう思った。

そこで小休止し、地図を取り出そうとした・・・が、どうやら沢で地図を流してしまったらしい。

 明月荘で一泊し、翌日、知っている道で帰るか、うろ覚えの道でロープウェー乗り場に行き、下山するか・・・私は明月荘で一泊することを選んだ。

 入山者カードは、本日下山予定で提出したのが気にかかったが、携帯電話が通じないのでどうしようもない。緊急連絡先の母親に迷惑をかけるかもしれないなと思う。

 方針が決まったので、明月荘に向かう・・・が、途中、8人ほどのパーティーに出会う。話してみると、どうやらロープウェーに向かうらしい。

 しかも、このパーティーは営林局の人たちらしく、ここら辺の登山道は知り尽くしている。

 このパーティーに入れてもらい、ロープウェーに向かう。

 そして、3つのリフトを乗り継ぎ、ロープウェーで無事下山を果たすことができた。

 車は浄ケ平に置いてあるが、私が下山したのは反対側の米沢市。米沢市で一泊して、翌日、電車で福島駅に行き、そこからバスで浄ケ平に向かうことにする。

 その夜、生還祝いということで、「米沢牛ハンバーグセット1900円」「米沢牛ビーフシチュー2800円」と夕食を奮発した。とてもとてもおいしかった・・・

「生きてて良かった・・・」

本当に心の底からそう思いました。

 

 

 

 

文章は、思ったままに書いたので、結構、おかしい箇所がありますが、ご了承ください。

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コメント

遅くなっちまった・・・ってうお!!

うう、無事で何よりだ!平穏の日々ってやつがいかに幸せなことかを思い知らされるねぇ。

ちょっと感動した。(ノД`゜)。ハンバーグとビーフシチューしみたろうなぁ・・・

うん、俺っちも毎日を大事にするよ・・・3onで(オワタ!)


投稿: 遼麗 | 2008年9月21日 (日) 02時20分

>遼麗さん
あははは
ハンバーグとビーフシチュー、うまかったよーw

投稿: ミル | 2008年9月24日 (水) 06時27分

(^-^;
生きてて良かったな~

投稿: NむR | 2008年9月24日 (水) 21時36分

通りすがりです。
私も登山を初めて間もない頃、ほぼ同じ体験しました。
枯れた沢を下って、最後は10メートルくらいの崖の上に出て
両サイドも断崖絶壁でした。携帯が運良くつながったので、
ヘリコプターに助けてもらいました。登山道でない、沢下りは一番やってはいけないことみたいですね。


投稿: morich | 2009年9月22日 (火) 07時56分

>morichさん
 morichさんも同じような体験をされたのですか!
 沢下りは、足場が悪いし先が読めないし迷いやすい・・・やっぱりやってはいけないのですね(゚ー゚;

投稿: ミル | 2009年9月22日 (火) 18時58分

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